ダンスファン2001年2月号に掲載(12月27日発売)

ひよこ組日記「涙の決勝戦」が載りました

         

「また最終予選だよ……。これでもう4回連続だ」
9月10日青砥での東部ノービスラテンでのことだ。
去年の5月からノービスに挑戦し出してすでに7回目。
ダンスの神様はまだだめだと言う。
来週もがんばるか。ああ、きっとこのメンバーはまた来週もいっしょよ。
 3年前の9月、野球一筋の夫を「見学するだけでいいから」と
やっとの思いで騙して教室のドアをあけた。
大ヒットした映画の「Shall We ダンス?」も知らなければ、ウリナリも
知らなかった。大好きな夫とダンスを踊りたい。それだけだった。騙した
つもりであったが、体育会系の彼の血が騒ぎ出すのに時間はかからなかった。
 5ヶ月後、初心者同士でちょっとオトナの夫婦競技ダンサーの誕生である。
二人の名前が、ひであき・よりこなので「ひよこ組」、盛岡在住の無名無級のダンサーだ。

9月16日
窓を叩く、横殴りの雨がすごい。
ホテルパシフィックの十五階からは怖いけど雷がきれいなくらいに光る。
何度も何度も光る。
テレビを見たら、「台風、大雨警報」
とんでもないときに来てしまったなあ ……。と同時に、競技会場のホテルに部屋を取ってよかったとほっとする。
「いよいよ明日だね…」
 今日のレッスンは一際厳しかった。
「誰がゼッケン背負ってるの!もう1回っ!」
「だめだめーー!何やってんのおー、ほらっ!足っ!ピッと立つのお!」
東京の先生のゲキが飛ぶ。
ジョーク混じりのレッスンが最後には、先生の声だけが教室に響いていた。
こっちも真剣だけど、先生も本気だ。もうヘトヘト……。ホテルまで戻る
体力がなくて途中でドリンク剤を買う。
 折りしも、シドニーオリンピックの真っ最中。夜、金メダルの柔ちゃんの
インタビューに感動しながら、「がんばれば信じていればきっと突破できる。」
なんだかそんな気持ちになってきた。
ホテルの照明で思いきりキラキラと光るようにと、取れかかったひでちゃんの
衣装の石をチマチマつける。なんだかそんなことが気持ちを落ち着かせる。


9月17日
どうか私たちの昇級記念の一日になりますように。祈るような気持ちだ。
やはり今日も朝から激しい雨。
移動時間ゼロ。それだけは楽チンである。ちょっと気持ちにゆとりが出る。
部屋で化粧から着替えまですべてすませて、ケバイ化粧を見られないように
エレベーターの壁側を向く異様な二人だ。1階の会場につくと、おおおお、
8時というのにすでに控え室は満杯。
シャンデリアの下でってのはやっぱり気分が違う。思いきり踊るべえ。
 メンバーみたら、やはり先週と同じメンバーがけっこういるではないか。
せっかく先週の上位9人がぬけたのに、また強そうなメンバーが入ってきている。
あああ、学生もいるね、、、。あそこと、そこと、ここと……。
最後まで気は抜けない。今日は8人が昇級だ。
「最終予選までは必ずオレがつれていくから、チェック表みるなよ」
いつもチェック数で一喜一憂する私を気遣って、「とにかく勝ちぬけばいいんだから」、
そう言って私の手を握る。
東京の先生も来てくれた。じっとこちらを見てくれている。でも、声はかけない。
目だけで挨拶する。「がんばんなさいよ」そう言っている。
1予選、2予選、最終予選、来た!
準決勝までやっと来た!
そして最後、準決勝を踊り終えて決勝進出者のリストが貼り出された。
「53」の文字が見えたけど、何度も人数を1・2・3・4・ってひでちゃんが数えてた。「8人だ、8人だ!」
ひでちゃんが叫ぶ。「決勝入ったんだよ!昇級決まった!」
涙がブワーってあふれてこぼれる。
ひでちゃん、ありがとう。ほんとにありがとう。
「よかったよかった。ここまで来たら思いきりやるのよ!」
先生にあふれる涙をふいてもらって決勝はうれしくて思いきり踊った。
はっきりいってあばれていただろう。
結果は8位。誰がみてもきっとダントツの8位。(わはは)何位でもいい。
 絶対この日に決めたいね、指輪も何にもいらないから、ひでちゃん、私にD級ちょうだいよお。
今月にはいってから、ジョーク混じりに、でも呪文のように言い続けていた。
実は17日は私たちの10年目の結婚記念日なのだ。10年前いろんな反対に合い、このままじゃ結婚できないと思い、二人の記念写真と婚姻届だけのジミーな結婚だった。
結婚したときのことや、ダンスを始めたころのことがぐちゃぐちゃになって波のようにうれしさが押し寄せてくる。
ダンスの神様ほんとにありがとう!
10年目の記念日に大きな大きなプレゼントをくださった巡り合わせに心から感謝したい。信じていればきっと思いは通じる…・。
その思いの強さだけは出場組中ダントツだったかもしれない。そう信じよう。


9月18日
昨日の天気がウソのようにきれいに晴れ渡った。
結婚10年目のお祝いは勝っても負けてもディズニーランドに行こうね。
そう決めていた。
ミッキーがショーの中で「いつか必ず夢はかなうのさ!」と言うたびに、
大好きな「星に願いを」の曲を聴くたびに涙があふれ出てしまう。
きっと一生忘れられない記念日だ。
ダンスをしていなかったら、こんな感動的な記念日はなかったかもしれない。
二人で歩む人生であきらめたものもあるけど、でもダンスはあきらめずに、
これからも行けるところまでがんばって行こうね。
20年30年の結婚記念日もダンスとともに祝えたら最高だな。
 まだひよこ組はスタートラインに立ったばかりだ。ダンスに導いてくれた最愛の叔母に、そしてこれまで地道に育ててくださった盛岡の先生と東京の先生に心から感謝したい。
これからもひよこ組をどうぞよろしく!